山田哲也(やまだ・てつや) 准教授

◆自己紹介

 琉球大学教育学部卒業後、一橋大学大学院社会学研究科で教育社会学を専攻。宮城教育大学教育学部、大阪大学人間科学研究科を経て、2010年度に一橋大学へ着任。学部時代は障害児発達心理学を学ぶかたわらで民間教育実践・研究運動に関心を抱き、大学院からは現代的な教育問題の特質とその背後にある社会構造を把握・分析すべく、社会学や教育学を学んできました。
 ある時期から、私たちは学校を経由して社会に出る道筋を自明視するようになりました。こうした状況が到来することで、個人はいかなる自由を得て、何を断念することになったのでしょうか。また、近年は学校を媒介にした子ども・若者から大人への移行過程が大きく変化するとともに、「教育改革」の名のもとで教育制度のあり方を根底から改変する動きが進行しています。そのなかで教師や学校の社会的な位置はどのように変化し、保護者・子ども・地域住民と学校とが取り結ぶ関係はいかなるものへと再編されてゆくのでしょうか。現在はこれらの問いに関心を抱き、研究を進めています。

◆E-mail

山田哲也

◆主な研究領域

教育問題の社会学(特に不登校論)、教育改革の社会学

◆代表的な図書・論文

  • 石戸教嗣・今井重孝編『システムとしての教育を探る』(共著) 勁草書房、2011年
  • 苅谷剛彦・堀健志・内田良編『教育改革の社会学─犬山市の挑戦を検証する』(共著) 岩波書店、2011年
  • 「不登校の親の会が有する<教育(ペダゴジー)>の特質と機能─不登校言説の生成過程に関する一考察─」『教育社会学研究』第71集、2002年

◆学部の主要担当科目

「教育社会学」「教職の意義と教師の役割」「教育研究法」「教育課程編成論」「ゼミナール」

◆大学院の主要担当科目

「教育計画」「教育の研究方法論」「ゼミナール」

◆研究プロジェクト紹介

(1)不登校児家族の自助グループに関する研究
 不登校の子どもを持つ家族の自助グループ(親の会)を対象に、かれらがわが子の不登校をどのように理解し、いかなる働きかけを志向するのか、そのペダゴジーの特質と機能を明らかにすることを目指す研究です。不登校問題を手がかりに、子どもから大人への移行過程が長期化・複雑化するなかで家族が果たす役割がどのように変化しているのか、そこでの学校の位置づけはいかなるものか、家族─学校関係の深層構造の変化を探ることが目的です。

(2)公営住宅の事例研究を通じた格差社会における子育て・教育の実態把握
 ある地方都市(B市)に位置する大規模な公営住宅A団地の住民を対象に、かれらの子育て・教育の実態とそこで生じる諸困難を把握することを目指した調査研究です。格差社会化が進行していると言われる今日の日本社会において、社会経済上の格差・貧困が教育領域にいかなる影響を与えるのかを明らかにするとともに、問題に対処するための道筋を探ることを目的としています。

(3)教育格差の是正・縮小を企図した学力政策に関する国際比較研究
 日本を含む6つの国(日本・イギリス・ドイツ・フランス・アメリカ・オーストラリア)における、子どもたちの学力格差を是正するための政策を比較・検討し、教育社会学的な観点からの整理を試みる調査プロジェクトです。山田はオーストラリアを担当し、ビクトリア州を対象にした事例研究を通じて、先住民をはじめとする社会的マイノリティの学力問題の現状と、かれらを包摂するための学力・教育政策の実態、その可能性と限界について探究しています。